2015年10月9日配本で、
『長く健康でいたければ、「背伸び」をしなさい』(仲野孝明 著)
という本を刊行いたしました。



これまで何冊もの健康本を手掛けてきた私が、
今年の「勝負本」として位置づけて、
力を注いで完成させた一冊です。

これまで担当してきた健康本は以下のようなものです。
ちなみに闘病記もいくつか作っていますが、
それはエッセイということで、除外しています。

【過去の健康本一覧】

『脳からストレスを消す技術』(有田秀穂)22万部
『脳ストレスが消える生き方』(有田秀穂)2万部
『心の病気も体の病気も首で治る』(松井孝嘉)1.2万部
『体が若くなる技術』(太田成男)4万部
『健康は「内臓さん」で決まる』(伊藤裕)1.2万部
『免疫力をあなどるな!』(矢崎雄一郎)6万部

体の仕組みとは面白いもので、
ひとつのことが万事に通じており、
体の調子というのは個別のことをしっかり身につけることで、
よくなっていくものですね。


今回の本、
編集者的な視点から、
本づくりの紹介をしていきたいと思います。

まずはタイトル。

『長く健康でいたければ、「背伸び」をしなさい』(仲野孝明 著)

この本のキーワードは何かというと、
ひとつしかありません。

そう、「背伸び」です。


健康本のなかでも、
いわゆる「姿勢」に焦点を当てたものになります。
姿勢本といえば健康コーナーでは
ひとつのジャンルを形成している分野です。

『猫背は治る』(小池 義孝 著)

という本が売れたのをきっかけに、
数多くの姿勢矯正本が出るようになりました。
しかし、そのマックスはだいたい20万部。

がんをテーマにした本もだいたいマックス20万部といわれているので、
同じくらいの読者層ということがわかります。


今回、仲野先生の本を作るにあたって、
最初に宣言したことが、
「マックス20万部の本づくりはしません」
ということでした。


仲野先生の「背伸び」は誰でも取り入れることができ、
しかも大きな効果が得られるものです。


これを単なる「姿勢本」として作ってしまえば、
どんなに頑張っても20万部です。
そうではなく、100万部を狙える本を作りましょう、
と言ってスタートさせました。


そのため、
実用性を重視し、アピールするという
姿勢本のセオリーを取っ払っています。
 
具体的にどんな工夫をしたのかというと、
以下の4つです。


【目的】姿勢本ではなく、一般的な健康本にする

①著者は東洋医学が土台ではない
②イラストは使わない
③装丁も姿勢本だと感じさせないニュートラルなものにする
④実用性より読み物を重視する(4段論法)


①著者は東洋医学が土台ではない

姿勢本といえば、ほとんどが東洋医学を土台にした著者が書いています。
東洋医学のファンというのは間違いなく一定数いるので、
そういった人たちが姿勢本の後押しをしている、
という側面もあるのでしょう。

でも、一般の健康本を読む人たちは全く逆で
西洋医学信奉がとにかく強いわけです。
ですから、東洋医学しか学ばれていない先生で、
一般の健康本を出そうと思うと、
内容の良し悪しはともかく、
なかなか受け入れられないのが実情です。

「気のめぐり」といった観念的な話よりも、
「ホルモンがどうの、自律神経がどうの」といった、
理論的な話が好きだということですね。

だから今回は整体の先生という肩書ながら、
西洋を土台にしている、ということを、
本書の冒頭でアピールしています。
肩書に「姿勢治療家」と添えているのもそのひとつです。



②イラストは使わない

今回、背伸びのノウハウを文章で説明してはいますが、
イラストで見せたり、写真でやり方を見せたりはしていません。
イラストがあると確かにわかりやすいのですが、
だからといって、イラストが万能かというと、
そうではないからです。

これは過去の数多くの本が証明しています。

イラストで図示したほうがわかりやすいはずなのに、
なぜ、イラストを入れるほうがいいとは限らないのか、
その点について詳しくは
また別の機会に書きたいと思いますが、
イラストを入れすぎると「実用書」のように見えてしまう、
という点が挙げられます。


実用書としての色合いが濃くなると、
よりピンポイントの読者に向けた書籍になり、
ちょっと興味を持った人が「読んでみようかな」と思える
気軽さがなくなってしまいます。

それこそ感覚としては、
ネットのニュース記事を読むのか、
書籍を読むのか、
くらいの違いがあるような気がします。

100万部を売る書籍の場合、
老若男女どの世代の、どんな環境の人にも興味を持ってもらい、
読めそうだな、と思わせなければいけません。

そのために今回、イラストを使うのは極力避けました。
とくに、背伸びをどう行えばよいのか、
という部分について、イラストに逃げずに、
ちゃんと文章を読むだけで理解できるように工夫しています。



③装丁も姿勢本だと感じさせないニュートラルなものにする


実用書のように見えない工夫として、
装丁でもイラストを使わないことを
最初から決めていました。

姿勢関連の本は、
だいたい背骨の写真やイラストがあったり、
背筋を伸ばしているような人の絵があったりします。

確かにそのほうが書籍のイメージや内容はわかりやすいのですが、
そうすると結局読者には「姿勢の本ですよ」と強く訴えることになり、
姿勢に興味ある人しか手に取ってもらえません。


それ自体はもちろん、悪いことではないのですが、
一般の健康書として読んでもらうならば、
それは避けなければいけない。

つまり、「健康になりたい」と思っている人にも
興味を持ってもらえるような工夫が必要なわけです。

イラストを用いて、実用書のようになると、
「姿勢」に興味のある人は振り向いても、
「健康になりたい」という人には届かないわけです。

もっというなら「うつ」や「高血圧」に悩んでいる人にも、
今回の「姿勢本」を手に取ってもらわなければいけない。
そのための工夫として、イラストを入れない、という判断をしています。

加えて、いかにニュートラルなものにできるか、
シンプルで奇をてらったものにしないか、
ということを突き詰めました。


100万部に届く本というのは、
往々にしてシンプルです。
シンプルだから、80歳のおばあちゃんも、
30歳のビジネスマンも手に取れるようになるのです。



④実用性より読み物を重視する(4段論法)


とくに最近の健康本では、
本の冒頭に、
「なにをすればどうなるのか」
という内容を持ってきます。

そのほうが読者にとって、
どんな手間をかければ、
どんなメリットが得られるのか、
それが明確に理解できるからです。

冒頭だけカラーページにして、
写真を使いながら
マッサージの仕方やつぼの押し方、
ストレッチの仕方など、
さまざまな健康本でその見せ方の手法が用いられています。


でも、今回はその明確化というメリットを
あえて捨てて本づくりを行いました。

これも結局は「実用性をあえて捨てる」ということの一環です。

実用性ではなく、「読み物性」を重視し、
本全体に取り入れています。


「読み物」の性格を強くすることで何がプラスになるかというと、
メッセージをより強く印象づけられる、
ということです。


実用書はあくまでノウハウ重視なので、
結果にコミットする、という点での印象は残りますが、
著者の主張や人柄などは残りにくいという点が挙げられます。


今回の著者である仲野先生は、
とてもお人柄もよく、
また最前線で活躍するトップクラスの先生です。

そんな先生の専門性やお人柄を伝え、
独自のメッセージをしっかりと届けていくために、
読み物性を重視しました。

具体的には、
私の本づくり(構成)の基本となる
4章構成にて作成して、
起承転結の起伏をつけています。
(4章構成の細かい内容についてはまた改めて行います)


それによって最後に書かれた先生のメッセージが、
本当に心に残るようになり、
ただの健康本を超えた、
日本全体をよくするための提言本のようにも感じられます。


☆☆


以上、4つの点に触れながら、
今回の本づくりではなぜ、
姿勢本のセオリーをすべて捨てて勝負したのか、
について触れました。


こういった、実用色の強い本のターゲットを拡げ、
多くの人に読まれる本にすることは、
編集者の腕の見せ所です。


もちろん、実際に結果が伴わないと説得力はないのですが、
書籍の背景として、ぜひお伝えしようと思いました。
今後の展開を見守っていきたいと思います。

背伸び②