ここ数年の大躍進がめざましく、
いま、とにかく注目を集めているメディアがあります。

それが「東洋経済オンライン」です。

東洋経済オンラインは、
「四季報」で有名な東洋経済新報社が運営する
日本最大級のビジネスニュースサイトになります。


出版業界の人たちなら必ずチェックしているメディアですね。


少し前の話になりますが、今年のはじめに、
東洋経済オンラインの
山田俊浩編集長のセミナーに参加してきました。


とても参考になるセミナーだったのですが、
改めて振り返ってみたいと思います。


というのも、今となっては、
当時以上に東洋経済オンラインの注目度は高まる一方で、
ネットメディアの隆盛に取り残されているような編集者や著者さんも
少なくないなと感じることが最近多々あります。
(ネットメディアについて聞かれることが続けてありました)


でも、意識が高い方々は、
本当に私も驚くくらい勉強もされて、使いこなしてもいます。
つまり、デジタル部分の格差が拡大している、ということです。


今回の記事では、
注目度ナンバーワンメディアの編集長、
山田俊浩氏のお話を紹介しながら、
ヒントを提供できたらと思います。


まず、セミナーはおそよ1時間15分の内容でしたが、
編集長という立場から見る
東洋経済オンラインの現状や分析、
また、オンラインメディアへの言及は、
非常に示唆に富むものでした。

オンラインの知識が不足しがちな編集者にとっては、
まさに、参考になる話だったと思います。


私は幸いにも東洋経済オンラインの副編集長である、
武政秀明さんとよくお会いしていて、お話を伺う機会があるので、
多少なりとも予備知識はありましたが、
いろいろな可能性を考えさせられるセミナーでした。

せっかく触れたのでご紹介すると、
武政副編集長も私がいつも「すごいなぁ」と思う
優秀な編集者でいらっしゃいます。

武政さんがお話しされたセミナーに二度、
参加させていただいたことがありますが、
タイトルのつけ方からネットメディア分析まで、
いずれも本当に勉強になりました。

とくに、年明けに参加させていただいたセミナーは、
ここ最近で一番刺激的なセミナーでした。


とにかく、東洋経済オンラインといえば、
いまや出版業界では誰もが注目するような
メディアのひとつです。

近年怒涛の勢いでアクセス数を伸ばしており、
いまや月間2億PVを超えるアクセスと人気があります。


そんな東洋経済オンラインについて、
山田編集長が話をしてくださいました。
(※注 内容は2017年の年初時点での話になります)


まず簡単に山田さんのご経歴について触れますと、
山田さんは新卒採用で東洋経済新報社に入社され、
Yahoo!やマイクロソフトなどIT系企業を担当されていたそうです。
小さな会社から巨大企業へと成長する様子を目の当たりにしてきて、
それは非常に貴重な経験だったとお話しされていました。

東洋経済新報社自体は1895年創業と120年以上の歴史を持つ出版社で、
「会社四季報」が最も有名なキラーコンテンツとしてある会社です。

創業時からデータを扱うことをイメージし、
データに基づいて世の中を議論していこうという視野の先に、
会社四季報などの紙媒体があったといいます。

私は学生時代、社会心理学という
「データ」を扱う専門学科みたいなところにいましたが、
100年も前からデータで世の中を議論しようという先見性は、
おそらくすごい画期的なことだったのだろうと推察します。

社員数は250~260人ほどで、売上100億円。
うち、経常利益7~8億円で、
この数字は240億円の売上を誇る文藝春秋と同じくらいだとか。

つまり、それだけ東洋経済新報社が、
利益率の高い会社であるということがわかります。

それをけん引する媒体に育ってきた東洋経済オンラインですが、
立ち上げは2012年で、利益的にもようやく伸びてきた、
ということをお聞きしました。

とにかく読まれる記事を配信する東洋経済オンラインですが、
10人の編集部員がそれぞれ1日に1~2本作成しているといいます。

毎日毎日、1~2本ですから、
これは書籍の編集者からすると、
かなりすごい数字です。

もちろん、編集者には休日がありますが、
記事に「休日」はないので、
休日の記事をストックしないと休めません。

つねにパフォーマンスが要求されるということでしょう。

そんな東洋経済オンラインですが、
その特徴について次のように触れていました。


【東洋経済オンライン特徴①】硬派な記事

東洋経済オンラインは「週刊東洋経済」を刊行しているというブランドもあり、
政治、経済、ニュースなどの記事を中心に
東洋経済オンラインは硬派な記事を意識しているようです。

以前、ロイター通信の記事で、
「日本は芸能ニュースが多い」と話題になったことについて
触れていらっしゃいました。

これは私も当時、リアルタイムに記事を読んでいて、
考えさせられましたが、
一方で硬派なニュースを一番読んでいるのはギリシャだそうです。

国が不安定であるほど硬派なニュースに自然と関心は集まるという話は、
なるほどな、と思いました。

2016年の夏に東洋経済オンラインで
イラン人のサヘル・ローズさんを起用したキャンペーンをされたのも、
その方向性を失わないため、ということをおっしゃっていました。

オンラインにはさまざまな記事があり、
方向性もブレてしまいがちです。

そんななかで、
「国内ビジネス誌系サイト、ナンバーワン」ということを、
しっかり守り通すのはやはりしっかりとしたビジョンがあるのだと感じます。

山田さんもおっしゃっていましたが、
あまり残念な記事を載せるとそのあと反動があるようです。
継続的な成長をするためにも、
「ひとつ新しいものやるなら、ひとつやめる」
これを編集部のルールとして
品質を保っていらっしゃいます。

これを徹底できているのは
とてもすばらしいですね。

「なんでも流すよりキュレーション(=まとめる)する」
という表現をされていましたが、
ほかのウェブメディアでは
とにかく記事をたくさんアップして、
アクセスを稼ごうとしているのが現状です。

ただ、東洋経済オンラインさんの成功に習うかのように、
今は、だいたいどこのウェブメディアも記事を絞るようになっているそうです。

そういった意味ではネットは反応が早いですね。
書籍ではまだまだ単行本点数が多く、
本数を絞って品質を、という状況にはなっていません。


【東洋経済オンライン特徴②】トレンドに経済的な視点で迫る

ひとつ、東洋経済オンラインの記事をご紹介しましょう。


山田編集長のお話をお聞きしたときは、
上記の記事が非常に読まれていたタイミングでした。
(ちなみにこれは先ほどの武政さんのご担当でした)

東洋経済さんは
昨年活躍が目覚ましかった文春さんのように、
「スクープ」を報道するわけではありません。

多くのメディアも同様で、
スクープの後追い記事でアクセスを稼いでいるのですが、
東洋経済さんはただの後追い記事はやらないと決めているとおっしゃっていました。

そうではなく、
「トレンドに経済的な視点で迫る」。
つまり、独自の切り口で、
一般読者が関心のあるテーマを扱い、
情報を提供するということです。

それによって「後追い」の記事に、
しっかりと独自の価値を付与していらっしゃるからこそ、
アクセスがしっかりとついてきているのだろうと思います。


【東洋経済オンラインの特徴③】東洋経済という冠

これはなるほどなと思ったのですが、
多くのビジネス誌系サイトでは
だいたい「ウーマン」のサイトがあるそうです。

しかし東洋経済オンラインでは、
そういったものは作っていません。

理由は、
「ウーマン」という名前をつけた瞬間に、
「東洋経済オンライン」が「男性向けサイト」とカテゴライズされるからです。

そうなるとひとつのサイトに人が集まりにくくなるわけですよね。
ユニクロの例を出されていたのですが、
ユニクロは男女のレーベルなんてない、
だからこそ店内には老若男女いる、ということでした。


ちなみに東洋経済オンラインは、
『週刊東洋経済』に比べると、
若い年齢層の読者に支持されているようです。

平均年齢40代前半とのこと。
雑誌はプラス15歳くらいとおっしゃっていたので、
だいぶ開きがありますね。

出版社を代表するブランドを持っている出版社であれば、
ブランドを大事にすることが重要です。
そのためオンラインサイトはブランドとなる商品ごとに作成することが多く、
たとえば、雑誌を抱えている講談社や光文社は
雑誌ごとのオンラインサイトを持っており、
講談社オンライン、光文社オンラインというものを持っていません。

そのやり方を変えたのが
文春オンラインです。

文春オンラインは
2017年、最も注目されているオンラインメディアのひとつでしょう。
先ほども触れたように、
「スクープ」の機能を持つ文春ですが、
本格的にサイトに参入し、それがどのように機能していくのか、
各社、その様子を見ているはずです。


もちろん、文藝春秋ではこれまでもサイトは個別にありました。
しかし、個別にあった
クーリエや週刊文春、文藝春秋をまとめて、
ロゴも作って「文春オンライン」に一本化してきたのです。

会社の名前を冠にして、
会社のブランディングもあわせてやっていく。
そういった方向性の転換が見て取れます。

女性誌のサイトをジャーナルと一緒にするのは、
さすがに方向性が雑多になりますが、
だからといって個別のものを数多く作るより、
まとめる方向性がいいということでした。


【東洋経済オンライン特徴4】全記事無料

ビジネス系のサイトは大きく分けて、
有料サイトと無料サイトに分けられます。

有料サイトの代表格が
日経オンライン。

無料サイトの代表格が
東洋経済オンラインです。


この話は以前お聞きしていたことでもありますが、
東洋経済オンラインさんは、
「だれでも」「どこからでも」読むことができるということを
指針としているそうです。

三年前、日経オンラインがうまくいっていたころ、
東洋経済オンラインさんは、
まだアクセスが少なかったそう。

だから、まずはマスメディアになろうという目標をたてたそうです。
そのため東洋経済オンラインは無料を継続しており、
また、無料でアクセスを伸ばしていく、
という明確な方向性があったからこそ、
特徴①~特徴③のような指針を掲げて、
アクセスを伸ばすことに集中する土台ができあがったのでしょう。



以上が東洋経済オンラインの特徴として
お話をされていた部分です。

また、お話のなかでは
書籍との関連もお話しされていました。

東洋経済さんといえば、
『最強の働き方』(ムーギー・キム)
『LIFE SHIFT』(リンダ グラットン 、アンドリュー スコット、池村千秋訳)
をはじめとして書籍も好調です。

その要因としては、
東洋経済オンラインと書籍の関連性を
挙げていました。

もちろん書籍だけに限った話ではありませんが、


ウェブサイト→雑誌
ウェブサイト→書籍
ウェブサイト→セミナー


といったように、
いかに「紙」のものを売っていくかが大事で、
ネットと紙はよく競合するといわれるけど、
そうではなく一緒に発展していく道を提唱されていました。

私はそう思いますし、
業界としても、ネットと紙の共存は主流になってきています。

そのため、
どうやったらオンラインが紙の売上につながるか。
ということにも思考を巡らせているようです。
一番わかりやすいのは、
記事を読ませてアマゾンに持っていくということです。

実際、『最強の働き方』を扱ったムーギーキムさんの記事では、
配信日の閲覧数で1位を獲得、
アマゾンランキングも総合1位になったようです。

東洋経済オンラインのすごいところは
自社のものばかりではなく、
他社のプロモーションもしているところです。

自社作品ばかり紹介していると宣伝になってしまうので、
ちゃんとバランスを見極めているようです。
セミナーではそのバランスについての具体的な言及もあり、
じつに絶妙なバランスだと感じました。

ちなみに私も
『女の運命は髪で変わる』(佐藤友美)という本にまつわる記事を取り上げていただき、
女性向けの本にも関わらず、大きな反響となりました。
(その節はありがとうございました!)

女の運命は髪で変わる
佐藤友美
サンマーク出版
2016-06-07

 

面白いなと思ったのは、
書店と異なり、
「値段の影響」をあまり受けないことです。


書店では高い本はやはり抵抗がありますが、
アマゾンでは1000円でも3000円でもそこまで影響はなく、
安いからといって購買が跳ね上がるわけでも、
高いからといって購買が極端に落ちるわけでもないようです。


書籍の場合、
1000円なのか、1200円なのか、
1300円なのか、1400円なのか、
1500円なのか、
すべて目的が異なりますからね。
ネットでの販売というのは考えさせられます。

ちなみに記事のアマゾンリンクには
アフィリエイトをかけてらっしゃるようですが、
その金額、詳細はおっしゃいませんでしたが、
「だいたい」をおっしゃっていて、
すごいな、と思いました。

セミナーではもっと具体的な部分や、
詳細もありましたが、
とにかく東洋経済オンラインは注目のメディアとして、
これからも目が離せないですね。