前回の記事で、エントリーシートは運ではなく、
対策と必勝法があるかどうかで決まるということを書きました。

この記事では、具体的にエントリーシートの項目に対して
どのように考え、対応していけばいいのかを書きたいと思います。 
今回取り上げるのは、出版社のエントリーシートに頻出する
次の項目についてです。
  
◎ 最近読んでよかった本・好きな本
 
この項目はまさに「ザ・出版社ならではの項目」です。
何を書けばいいのかわからない、
ということはあまりないでしょう。
 
ただ、シンプルな質問だけに、
 
「これなら十分書ける」
「最近読んだ本を書こう」
「あまり本は読んでないから、手元にある本を書こう」
「今から書店に行ってこよう」
 
などと、いかようにでも書けるような錯覚に陥ってしまいます。
これがなかなか気づかない「落とし穴」です。
 
採用がしっかりしている出版社だと先ほど触れたように、
「課題」や「企画」をエントリーシートの時点で書かせます。
 
しかし、90%以上が中小企業である出版業界では、
採用にまでしっかりと時間や労力を割けない、
という出版社も珍しくはありません。
 
そういうところでは
学生に負担を課すハードな課題はあまり設けられません。
するとどうなるかというと、
「よくある項目」でエントリーシートを判断することになるので、
学生同士の印象になかなか差がつきにくい、
という現象が起こります。
 
すると必然的に、
「最近読んでよかった本・好きな本」などの項目で
印象を上げることができるかどうか、
そのちょっとした差で合否が決まってきます。
 
 
なので、この項目も決して軽んじていいものではありません。
 
 
1つ1つの項目でしっかりとポイントを稼ぎ、
その先のステージを見据えるのであれば、
「何を書いてもいい」わけでは当然ありません。
ただ、シンプルな質問だけに、
「何を書けばいいのか」はなかなか悩みます。
 
 
とくにこの項目はそれほど書くスペースもなく、
せいぜい提案するのは最大3冊といったところでしょう。
3冊分のスペースがあらかじめ用意されているケースもあれば、
数行分のスペースが用意されていて、
そこに書き込むというケースもあります。
いずれにせよ、3冊がマックスと考えておいて
それほど間違いはないでしょう。
 
自由記述タイプで4冊も5冊も書き込もうとすると、
アピール感が強く出てしまい、むしろ逆効果です。
1冊に対するコメントも少なくなってしまうため、
その本を選択した理由を十分に伝えることができません。
 
 
では、その3冊を選ぶ場合、
どのように選べばいいでしょうか?
 
もちろん志望する職種にも影響はされますが、
基本的には
 
(1)その会社の本
(2)自分が本当に影響を受けた本、語れる本
(3)ランダム(方向づけ、全体の微調整)
 
という構成にするのがいいでしょう。
つまり、2冊の方向性はほぼ確定で、
残り1冊で「3冊のまとまり」を作っていきます。
 
なぜこのようなチョイスがいいのか、
その理由を簡単に書いていきたいと思います。
 
 
(1)その会社の本
 
出版社を志望し、本当にその会社に入るつもりがあるならば、
その会社の刊行物を読んでいるのは
採用側からしたら「当然のこと」です。
 
なので、受ける側としても、
「当然読んでますよ!」
ということを伝えておく必要があります。
 
もっというと、
「御社の本をいろいろ読んだうえで、この1冊がいいですね!」
ということを伝えるために、
1冊はその会社の本を選ぶのです。
 
ちなみに3冊すべて他社の本を書いた場合、
採用担当者がその3冊すべてわからない、
というケースが往々にしてあります。
そういう場合、
そこで「評価を上げる」ということは
非常に難しくなってきます。
 
 
わからないものに対して採点はしづらいからです。
その場合、よくて評価は「横ばい」です。
 
しかし、自社の本が入っていれば、
それだけで
「読んでいるな」
という判断はできます。
 
それに対しての考察や感想がちゃんと相手の心には残り、
そのうえでほかの2冊の記述も読んでもらえるため、
「ただ読まれる」ということになりません。
 
 
印象を「横ばい」で留めるのではなく、
「上げる」ということにつながっていくのです。
 
くり返すようですが、
非常に狭き門でもある出版社の就職活動では、
「無難」ではいけません。
かといって「奇抜」でもいけない。
 
評価が「平均」でも「横ばい」でもいけない。
「上げる」ということをいかに積み重ねられるかで、
採用されるかどうかが決まってくるのです。
 
ちなみに、面接に進んだ際も、
相手の面接官が3冊とも知らない本が並んでいると、
そこで話はなかなか弾みません。
 
受ける側としても、
まず本の説明をしなければならず、
話がより複雑になる可能性もあるため、
3冊ともその出版社以外の本を並べるのは、
危険があるのです。
 
 
(2)自分が本当に影響を受けた本、語れる本

 
次に二冊目。
「自分が本当に影響を受けた本、語れる本」です。
 
当たり前のようですが、
これは絶対に必要です。
 
でも、意外とこれを書いてくる学生は多くはありません。
自分のなかで、そういう本がないのか、
あるのに書いていないのかはわかりませんが、
これをちゃんと書ける人はとにかく少数派。
 
だからこそ、これをちゃんと書ければ
そこで「差」をつけられる可能性は大いにあります。
 
ちなみにこれを書いてこない人の多くは、
「売れている本」「話題の本」「同じジャンルの本」
を書いてくる傾向にあります。
 
その人の「傾向」は
確かにその3冊からつかめることはありますが、
真新しさはあまりなく、
その人のパーソナルな部分での「プラス」にはなかなかなりません。
 
さて、
影響を受けた本、語れる本、
ということですが、
その内容はいろいろあるでしょう。
 
「本当に一番好きな本」
「本好きになったきっかけの本」
「とにかくのめり込んで読んだ本」
「自分の進路を決めるきっかけになった本」
「自分の考えを変えた本」
 
などなど。
とにかく影響を受けたことや好きな理由を語れれば、
問題ありません。
 
また、その本が売れているかどうか、
有名かどうか、ということも関係ありません。
 
面接官が知らなければ売れていても売れていなくても一緒です。
むしろ売れている本に対しては
その人なりの意見があったりするので、
そこと食い違う可能性もあり、
評価が厳しくなることにもつながりかねません。
 
ついつい面接官の知っている本を書こうとしてしまいますが、
「その役割」を②の本でしてはいけません。
 
その役割を効果的にこなしておくためにも、
①で「その会社の本」を書くことが有効になってくるのです。
 
さて、話を戻しますが、
選ぶ本で大事なのは、
売れているか、ということよりも、
「自分の何かにちゃんと影響している」ということ。
 
とくに、自分の「パーソナル」な部分に影響している本を選ぶことです。
これをちゃんと選ぶことができれば、
少なくとも、自分のパーソナルな部分を1つ以上、
アピールすることができます。
そうすれば評価は「横ばい」ではなく「上向き」に変わっていくのです。
 
 
「この本に出会って恋愛観が変わった」
 
 
でもいいし、
 
 
「この本に出会って死生観が変わった」
 
 
でもかまいません。
他にも、自分のパーソナルな部分との結びつけでいえば、
たとえば、
 
「何度もこの本の内容を実践した」
→素直に実践することが身についた
 
「人間関係が苦手ではなくなった」
→チームをまとめるのが得意になった
 
「友人にアドバイスでき、喜んでもらえた」
→相手への心遣いをするようになり、
 言われる前に他人のために行動できるようになった
 
 
などなど、
何でも応用がきくわけです。
 
 
本当に出版社に行きたい人であれば、
今、あまり本を読んでいないとしても、
過去に本を読んでいたことはあると思います。
 
もしくはこれまで読んだ本のなかに、
好きな本や心動かされた本が
1冊くらいあるはずです。
 
受けた影響は大げさなものじゃなくて構いません。
 
「これはほかと違った感動があったな」
 
とか、
 
「そういえば困ったとき、この本買って役立ったな」
 
とか、
 
「これを読んだとき、いろいろ考えることがあったな」
 
とか、
そういうレベルでもいいので、
それを思い出して、自分のパーソナルな部分とつなげていくのです。
 
そんな本をしっかりと思い出し、
見つけ出して、ちゃんと手元に置いたうえで、
書きましょう。
 
理想としては、
そんな本を数冊用意することです。
さらにいうと、
ジャンル別に1冊ずつくらい用意しておければいいでしょう。
そうすると、エントリーシートでも面接でも、
会社やそのときの状況によって、
より最適な本(アピールしたいパーソナル要素)を選択して
相手側にちゃんとアピールできるようになります。
 
 
(3)ランダム(方向づけ、全体の微調整)

 
3冊目に書く本は、
1冊目、2冊目に比べると、
それほど気を遣うものではありません。
 
ここは採用担当者が3冊まとめて見たときの印象を、
自分の意図にあわせて微調整するべきところです。
 
3冊全体のバランスを整えるもよし、
3冊全体の主張を際立たせるもよし。
 
たとえば、
 
1冊目に小説、
2冊目にも小説、
 
という人がよくいます。
 
そういったときに、
3冊目も小説だった場合、
「よほど小説が好きだ」と思われるか、
「小説しか読んでいないのか」と思われるか、
そのどちらかになります。
 
今回の手順に従えば、
1冊目に小説を書いているということは、
受ける出版社が小説を出している、
ということになりますが、
文藝春秋や新潮社のように、
小説を会社の柱としている出版社でなければ、
「小説しか読んでいないのか」と思われる確率は高くなります。
 
一方、とにかく小説の編集志望で、
小説の話を通じて自分をアピールしていきたい、
と思うのであれば
それで攻めたほうがいいでしょう。
 
ただ、総じて言えることは、
小説に力を入れている出版社であるほど、
印象はプラス側にはたらき、
小説に力を入れていない出版社であるほど、
印象はマイナス側にはたらく、
ということです。
 
なので、志望する出版社の性格や、
力を入れている部分をしっかりと把握し、
それに沿った形で対応し、組み合わせを変えていくことが、
非常に大切なスキルとなってくるわけです。
 
ときどきマンガしか書かない人がいますが、
それはさすがに印象はよくはならないので、
注意したほうがいいでしょう。
 
 
ビジネス書メインの出版社で、
小説ばかり、を書いても相手には響きません。
 
一冊目がビジネス書、
二冊目がノンフィクション、
 
ときたら、
三冊目に小説やマンガを描いて、
柔らかさを出しておく。
 
もしくは
歴史や宇宙の本などを書いて、
専門的な知識への興味があることもアピールしておく。
 
そうやって、
全体の方向性を調整して、
自分の引き出しの「幅」や「深さ」を調整するのです。
 
以上が、
「最近読んでよかった本・好きな本」を書くときの
注意点と攻略法になります。
 
 
 
以上の理由から、
最低でも1冊は志望する会社の本を読む必要があります。
そして、最低でも1冊は、
自分が本当に影響を受けたな、と思う本を
用意しておかなければいけません。
 
 
ちなみに2冊しか書くスペースがない場合は
①と②の2冊を選んで書いてください。
 
ではもし1冊しかない書けない場合はどうするか?
「その会社の本」を記述するべきかな?と考えるひとが多いのですが、
私はそれはおすすめしません。
 
「その出版社のなかで1冊」などという条件がない限りは、
別の出版社の本を選択して構いません。
 
「自分が本当に影響を受けた本、語れる本」
 
これを書いてください。
なぜなら、
「その会社の本」を書いた場合は、
本当に影響を受けた本・好きな本なのか、
出版社に気を遣って書いているのかがわからないからです。
 
もし「この本!」と思う1冊が、
本当に受ける出版社の刊行物であれば、
それはもちろん構いません。
 
 
<まとめ>

 
出版社をはじめ人気企業のエントリーシートでは、
課題や企画作成などの要素があり、
そこに意識が集中しがちです。
しかしそれらは自由度があまりに高く、
感性やクリエイティビティに影響される部分も多々あります。
 
それだけに画一的な攻略法はなかなか存在しません。
 
しかし、こういった項目ほど、
ちょっとした手間をかけて考えるだけで、
ハッキリと差をつけることができます。
 
好きな本をただ3冊書けばいいというものではありません。
実際に現場では、
そういったエントリーシートは、
よほどうまく書けていないと、どんどん落とされていきます。
 
 
なにを書くかが明確に規定され、
自由度が少ないからこそ、
その中でのアピールの仕方が明確に存在するということです。
 
これはほかのことでも同様に言えます。
みんな同じようなことを言いそうな、
みんな同じような表現をしそうな部分こそ、
差をつける「隙間」というのは存在するのです。

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